思いめぐらす日常のひとこま

はてなブログに移行し、和紙を素材に絵づくりなどを考えめぐらしています。

野外展示を観て②「夕張清水沢アートプロジェックト」

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構内には「大夕張~追憶の汽笛~写真展」優しく美しい写真展です。(写真展:照井かおり氏)
 
夕張は国のエネルギー政策から22か所の石炭採掘地があり、1960年の最盛期には2万の市民が炭鉱の町で生活していました。企業も積極的に関わり過酷な労働環境の中にも経済的には潤っていたようです。
しかし、国は安全で経済的にも安価という、新しい原子エネルギーへと方針を変えて夕張は閉山に追い込まれました。その後、夕張市の経済的基盤が危うい状況になり、2007年には財政再建団体に指定されています。国の施策に翻弄された夕張炭鉱の歴史でしょうか。
夕張の地名にはアイヌ語の「ユーパロ」鉱泉の湧き出る所という、由来があるそうです。
市内に入ると景色が変わり、深い山々に囲まれた街は自然に恵まれた豊かな環境に位置しています。空気も澄んでいるように感じました。
 
今回「夕張清水沢アートプロジェックト」が行った野外展示は、旧北炭清水沢火力発電所の廃墟地です。(野外展示期間:2011.9.17-10.16) 施設は夕張清水沢の空知域の採掘地に送電し、また清水沢ダムによって水力発電施設としても稼働していたようです。
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施設の全体図、 緑の部分が廃虚となって残っています。
 
残されている廃虚から記憶を辿るテーマに沿って、作品は発電所建物の内外に展示されていました。
ゲスト作家さんの作品の他、殆どは札幌市立大学の指導者、彫刻家上遠野敏氏とデザイン学部の学生さんが中心で展示の工夫もあります。全体的に記憶を掘り起こすような懐かしいイメージの作品が多い内容でした。
写真で紹介しますが、文章はプロジックトサイトの作品紹介を参考にしています。当時の暮らしを想像していただければと思います。
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火力発電所に送る運炭施設に展示。外で働く男性と家内にいる女性の生活を分ける作品。元炭鉱住宅の自宅を訪ね、窓の磨りガラスの柄を和紙にフロッタージュして完成。
 
この両隣に2つの部屋があり、女性がしていた事務処理の様子が片づけないままに残されています。
もう1室は、採掘で働く男性が一時休憩する小さな部屋です。
 
 
 
廃屋火力発電所の1階と2階 地下1階と建物の正面画に作品が展示されています。
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「おたからなあに?」
建物から離れた所に、採掘時に不要になった石炭の屑「ズリ山」あります。
地域の子供さんがズリ山で見つけた一人一人の宝物です。
捨てられた、きれいな石炭や石が宝物なんですね。
生活に沁み込んだ、黒いダイヤでしょうか。
展示を子供さんと一緒に飾ったそうです。宝物ですから、素敵な手製の座布団に個性を発揮して並んでいました。
 
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「かえるのを まちわびて」
同じ方向に並んだ炭住。
(危険な仕事から帰るのを待ちわびる、そんな共通した思いが込められている)
木造でつくり、屋根のトタンは元の炭住屋根を切り出したもの。
小さい家が並んでいて、今は閉山のため誰もすんでいない寂しい感じがします。
 
下からカメラを向けて撮りました。現在も仕事がなく夕張を離れてしまう、空き家になった住宅を重ねてしまいます。
 
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「窓際にもういない人」
壊れた窓に腰かけた炭鉱マン。
針金での作成なので、タオルやヘルメットを見て休憩している炭鉱マンと分かりました。
 
イスに腰掛け、談笑していた炭鉱マンを建物が知っているはず、そんな記憶をめぐらす作品になっていますが、過去のまぼろしのような侘びしさが伝わってきます。
 
 
 
 
イメージ 6「風神、雷神、千手観音」
2階に上がって、天上からつるされた大きな作品が飛び込んできます。
針金?の材質なので、しっかり見ないと形がつかめません。(作品作りで、重くて大変な作業だったようです)
作品に向かって、左が風神、右が雷神です。
制作者はアートディレクター上遠野敏氏です。この場所には自然を超える何者かに祈り保護される、ふさわしい内容です。会場の入り口にも、「スーパー地蔵」の作品が設置されていました。
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この作品の後ろに、赤い梯子が天井まで掛かっていて、火力発電所と空を繋ぐ窓になっています。
窓には「ガガイモ」という植物の綿毛がはってある作品です。高所恐怖症なので、梯子を昇るどころか、見上げるのがやっとでした。