思いめぐらす日常のひとこま

はてなブログに移行し、和紙を素材に絵づくりなどを考えめぐらしています。

★【心に残る場面づくり】「時の扉」

★心に残る場面づくり 【6回】 「時の扉」


 場面設定(紋別市 大山山頂展望塔)オホーツクスカイタワー)

 

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流氷の時期、展望台から紋別の街が一望できます。
今回のテーマは、辻邦生の小説「時の扉」です。(和紙を素材に、F15号で作っています)
「時の扉」は、毎日新聞夕刊の連載小説(19762-19772 )、主人公「矢口忍」の激しいまでの挫折、そして魂の再生の物語です。


東京で文学講座の講師である矢口は、受講生「ト部すえ」と出会う。すえは控え目で矢口に惹かれながらも立場をわきまえ、矢口に迷惑をかけてはいけないという姿勢で接していたが、矢口はすえの思いをそれとなく分かり交際をはじめる。
矢口の詩劇作で、すえは高校友達の女優「梶花恵」を紹介し、矢口は花恵を朗読役に決める。朗読指導の中であでやかな薔薇の芯を放つ「花恵」の魅力に引きこまれてしまう。すえと結婚話をしていたが物足りなく思えて花恵と結婚する。矢口はすえが電話で最後に言った「お会いできれば、私、しばらく東京を離れるつもりです」に、仕事があると言ってしっかりと受け止めていなかった。後々まで矢口は必死に叫んでいた彼女の心の声を聴くことができなかったと悔い、罪悪感の自己否定で心の旅をすることになる。「すえ」が小さな遺骨になり、祖父母の手に抱かれて帰ってきた時、罪を犯したと感じて償いの人生が始まった。

矢口は東京を離れて北海道の果て、オホーツク海の傍らにある開拓時を思わせる屋並みの低い町に住む。中学校の教師になり自分を消し去るため北国の荒れた孤独な環境で5年間過ごし、10年かけても罪の償いは消えないと刑罰的な日を過ごしている。ある日、流氷を見に行き、「灰色の雲の間からまた薄日が白く漏れ、幾筋もの光となって氷塊の上を照らしている。烏が一羽風に逆らいながら遠くの岬を目指して飛んでいった」


その後、詩人仲間だった「江村卓郎」に、シリア考古学調査隊に加わりたいと手紙を送り、シベリアの舞台になる。矢口はシベリアの砂漠で、「罪の償いがあるとしたら、この生を本当に生きることだ」と少しずつ分かりはじめていた。「夜明け前の雲は透明なすみれ色に変わり、明るいばら色に染まっていた」


<ひとこと>

小説では、「卜部すえ」と「梶花恵」を対照的な女性として描いています。2つの面を比較しト部すえを理想像としているようで少し気になりましたが、小説の世界ですね。


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★【心に残る場面づくり】作品を、主に小説の世界を描きサイトに5回載せています。サイトの不具合で、アップができず、こちらのブログで続けたいと思います。ネットでは参照可能ですので、下記にテーマを載せておきます。


(サイト掲載分)★【5回】「ときの彼方へ」(小樽:大学生時代の瀧口修造)     ★【4回】「或る日」(札幌:有島武郎宅) ★【3回】「見えない日常のたび」(網走:網走川の夜景)  ★【2回】「氷点」心の風景(旭川三浦綾子記念文学館前の外国樹種見本林)    ★【1回】「リラ冷え」(札幌:大通公園


★ホームページアドレス:http://www.geocities.jp/reimei_tear_5/