思いめぐらす日常のひとこま

はてなブログに移行し、和紙を素材に絵づくりなどを考えめぐらしています。

<「鈴木 吾郎 彫刻50年展」を観て>

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小樽市在住の彫刻家、鈴木吾郎氏の個展を観てきました。
彫刻50年の軌跡という、制作活動50年を記念しての開催です。
札幌彫刻美術館には、約50点の彫刻と10点のデッサン、また資料が展示されていました。
鈴木氏は道外展から海外へと、展示の場を広げ国内外で活躍されています。
道内の滝川にある「希望と躍進の像」や江別にある「北の若人」など、野外
彫刻も道内外に多く設置してあります。
 
近年はテラコッタ(素焼きの人物作品)の作品が多く、柔らかで素朴な味
わいがあります。
具象彫刻家の佐藤忠良に師事されていますが、初期の西洋的な彫刻から、
徐々に東洋的な表現の形になっているようです。
作品には自由な形が多く、髪の毛も両側に飛んでいるようで心が和みます。
作家さんはタラコッタとの出会いで、ご自分のスタイルを発見されたとの
こと。日本的な土偶の感じもあり、特徴のある作品です。
展覧会の情報を得た際には、作品に触れ、楽しまれてはいかがでしょう。
 
素朴で東洋的な精神を思わせるタラコッタ作品を中心に、写真でご紹介しま
す。(会場に作家さんが居られ、撮影の許可を快くいただきました)
    
★冒頭の写真は「2012No1」今年の最新作です。
 
30代の頃には、子供の頭や像を多く制作されています。(その1枚)
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★次の写真は、面白い作品です。(1枚)
1967年と1969
 
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左:1967年作「フリュート
右:1969年作「黒い人」
 制作年が違うのですが、一つの物語
 のようですね。
 
★「16歳のフォルム」線の美しい清楚な大きい作品です(写真)
 
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作者の言葉を引用:「自然の仕草の中に、何とも言えない雰囲気を持った
少女がいて、その子をモデルに作ってみました。中腰のポーズに古代彫刻のようなシンとした清楚な感じが出ていて、モデルに助けられて作った作品
です。作品からギリシャ彫刻『ニオペの娘』にも想いがありました。」
 
★東洋的な精神を思わせる作品です。(写真2枚)
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左:2000年作「阿弥」  右:2007年作「瞑」 作品の前に立つと、静寂で精神的な深みに引き込まれていきます。
 
★タラコッタの特徴的な作品です。(写真2枚)
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2005年作の「少女飛翔」2005年作「古代の風を聞く」
柔らかで素朴な形、手の表情がとても美しい。躍動感のある動。古代の微か
な音に耳を傾ける静。2つの作品に動と静の美を感じます。
 
★最後の写真は、昨年の東日本大震災後に作成した作品。
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20117月に開催した「具象彫刻30人展」と同じ作品です。
この作品を観て心を打たれました。「能」の悲しむ表現に、左手を胸に添えて俯く形が決まっています。偶然でしょうが、その所作が似ていて日本的な感情の表現のようにも思いました。
解決できないことが自分の身に起こり、今後も背負い続けることを、どこか
で受け止めている哀しみのようなものが伝わってきます。
泣き叫ぶわけでもない、激しい怒りをぶつけこともできない、あきらめとも違う、何か祈りのような哀しみが流れているように思いました。
 
作者の言葉を引用:「3・11を経験し、我々は未曽有の苦しみを体験している。私個人としては大した力にもなれないが、石牟礼道子『悶え神』のように、苦しみや哀しみに共感し、共に生きる思いを伝えたくて作りました。」