思いめぐらす日常のひとこま

はてなブログに移行し、和紙を素材に絵づくりなどを考えめぐらしています。

<札幌国際芸術祭 モエレ沼公園会場「フォレスト・シンフォニーinモエレ沼」を観て>

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7月22日の夕方、坂本龍一氏のインスターレーションと、能楽×アイヌ古式舞踊「北の大地を寿ぐ」を観るために、札幌市東区の郊外にある「モエレ沼公園」に行きました。館内の作品を観た後、外の「ミュージックシエル」に行く途中で雨がポツリと落ち、徐々に強風と雨で1時間後に舞台が中止。しょんぼり帰ってきました。
 
モエレ沼公園」の場所に立ち、札幌芸術祭の意味が見えてきたように思います。幕末から、明治、大正、昭和と、札幌に本府を置いて蝦夷地を北海道に変えてきた都市づくりと経済政策。20141月現在、札幌の人口194万人です。その発展の影で忘れてきた先住民の文化や自然破壊があったという事実は、どの地域にも通じると思います。北海道は未開地を道外の移住者によって開拓された地域という特徴もあります。
札幌芸術祭のテーマは「都市と自然」です。札幌の街全体にアート作品を点在させて都市生活を見直す、アートに触れて楽しみながら考える、いい機会だと思いました。
 
「センシング・ストリームズ―不可視、不可聴」
冒頭の画像は、ガラスのピラミッドに設置した巨大なビジョンに映しだされたもの。電磁波をセンサーで感知し、そのデータを真鍋大度氏が映像化し、坂本龍一氏が音楽に変換しています。
操作や内容を丁寧に教えていただき、体験してきました。前の白いボタンを押すと、画像が選べます。ボタンを左右に回すと周波が強弱になり音量も変わってきます。花のような、幾何学的な文様などが浮かび上がり楽しい体験でした。地下歩行空間「チ・カ・ホ」の作品に連動していることも、分かりました。
 
坂本龍一+YCAMInterLab「フォレスト・シンンフォニーinモエレ沼
 
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画像:このようにして、データを採集しているのですね。
 
 
 
 
 
 
12階には、国内外11カ所(道内は1カ所)の木にセンサーを設置し、環境の違う木からのデータを音楽に変換しています。暗い室内に流れるキーとの高い音に、低く、太く流れる2重3重の音は不思議な演奏を聞いているようです。
 
 
●「札幌国際芸術祭2014」のゲストディレクターの坂本龍一氏は、「モエレ沼公園」を特別な場所と考えておられるようです。
狂言師野村萬斎と帯広カムイトウウポポ保存会会長の酒井奈々子氏に呼びかけて、この場所で、祝い事の題目「翁」などの能楽と古式舞踊を企画しました。そして、展示空間には仮想の森を作りました。自然への感謝と地球上の森の音を聞いて欲しい願いが込められているようです。彫刻家イサム・ノグチが公園全体をアートで創設した公園を、坂本氏は「都市と自然」のテーマを考える場所として選ばれたのではないでしょうか。
 
(以前に、全体的な「モエレ沼公園」をブログでアップしています。)
 
 
●「モエレ沼公園」の歴史を簡単にご紹介します。
 
慶応2年に幕府の命を受けた大友亀太郎蝦夷地に入り、現在の東区辺りに用水路「大友堀」を作りました。(現在の創成川は札幌を中心に東西を分ける起点として流れており、その一部に大友堀が残っています)。「札幌村郷土記念館」のお話によると、大友は小田原の貧しい農家に生まれ、二宮尊徳に用水路の重要性を学んでいたが、武士の身分になって青年時代に幕府から派遣されたとのこと。「大友堀を作った後に幕府に呼び戻されて、よほど残念だったのか、大友はその後幕府の任を離れています。」(東区北13条東16丁目に記念館)。
 
明治初期に道外からの移住者が開墾し、明治22年頃から「モエレ沼」は田畑の水源として役割を担っていたようです。都市化に伴い「モエレ沼」は閉鎖水域になり、効率的な経済発展の過程でゴミ捨て場になっていました。その後、当地の住民は緑化の希望を札幌市に提言し、札幌市は昭和47年に『環状夢のグリーンベルト構想』の策定に取り込んで、その廃棄物を埋めています。 
                
(写真:白い帽子の人がイサム・ノグチです。視察の日も雨だったのですね。)
 
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●平成17年(2005年)に、彫刻家イサム・ノグチの設計に沿った現在の「モエレ沼公園」が開園しました。熊、鹿、狐、狼が住んでいた原生林を明治の人が苦労して開拓し、近代化への処理でゴミ捨て場になっていた広大な沼地が、アートで再生されたのです。
各国で独自の芸術作品を発表していたイサム・ノグチも、行政と芸術的活動をともにする困難さを感じていたようです。ある記事によると、この事業に魅力を感じながらも気持ちは揺れていたよう。そんな時に、建築家の川村氏と邦楽演奏家のご婦人が全面的に支え、ノグチの理解者だったそうです。経済的効果を気にしなければならない行政の立場と、芸術は未来を見据え作品を通して効果が波及するもの、具体的な数字で表せない。その違いがいつの時代にもあるようですね。
 
住民の意向を取り入れた札幌市は、芸術家との共同作業で公園全体をアートで再生した「モエレ沼公園」は全国的に知られるようになりました。
今回の札幌国際芸術祭は3年ごとの開催を予定し、第1回目の開催です。回を重ねることで、この札幌、北海道で都市と自然の融合した新しい生き方が生まれるのか、一市民として楽しみです。(芸術祭開催期間:2014.7.199.28)。
 
●尚、館内2Fの作品、竹村真一「触れる地球」展は、札幌グランドホテル内のグランビスタギャラリーサッポロでもあります。( 723日~916日 )
 
●1階入り口にあるのは、イサム・ノグチの作品です。
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