思いめぐらす日常のひとこま

はてなブログに移行し、和紙を素材に絵づくりなどを考えめぐらしています。

「東日本大震災から2年が過ぎていきます。本郷新作【奏でる乙女】から」

東日本大震災から2年が過ぎていきます。本郷新作【奏でる乙女】から」
 (2011年3月11日14時46分18秒を、覚えていますか?)
 
2013年3月9日現在、震災で亡くなった方が、1万5879人。2年が経過しても、警察に届けた行方不明者は、2700人もの方がいるのです。届けられていない、無名の方もいるでしょう。(数字は、岩手・宮城・福島3県のまとめ。警察庁の発表から)
 
イメージ 1
 
 (本郷新 作品「奏でる乙女」 札幌彫刻美術館に行く道の、中間辺りに設置)
 
このように発表された数字には、一人ひとりの重ねてきた人生、それぞれの思いもあったでしょう。
目を閉じると、青く黒い海。そして静かに押し寄せる波の前で、こちら側に生きて佇んでいる姿。そんな情景を想像します。行方不明の家族の方、親しい方は、どんな思いでいるのでしょう。
 
私はこんな時に、「復興と平和のシンボル」と言われた、「奏でる乙女」の像が浮かんできます。1954年に、戦禍を整理した六本木に、この像が設置されました。ギターを奏でる乙女は、戦後復興にふさわしいと親しまれたのです。
1975年に本郷新彫刻家が同じ作品をブロンズ像にして、現在の六本木の交差点に設置しました。札幌の作品と同じです。
 
復興の背後には、無言の哀しみが流れている、心のひだに消えることのない傷痕。
こんな時には、低く、静かに響いてくる素朴な音色は、そっと、やさしく包み込むような力があるように思います。「奏でる乙女」の像は、心を癒す象徴という気がするのです。復興を願う元気な作品も良いのですが、疲れた心には、静かな作品に慰められて生きる力を回復するのではないか、とも。
 
この作品に、解決の出来ない、喪失感の痛みをそっと感じとる作家さんの精神と、勝手に思い込んでいます。一つの作品に、どれほどの力があるのかは解かりません。
ただ、作り手の、人の生き死にへの共感の幅が、受けとる側にも響くのではないか、
と教えていただいたように思います。
 
イメージ 2